この頃、好きな人が分からなくなる。

 本当に好きなのかさえ分からなくなる事がある。

 こんな思いで人を見ていいのかな?

 私は望むよ。振り返ってもらえることを・・・



     Fran=2003,08,04=


 
 「じゃあ、行って来るわね!?」


 「は〜いぃぃ・・・」

 
 「私達が居なくても、やることはちゃんとやるのよ。わかってる?」


 「わかってるってばぁっっ」


 「あらそ。じゃ本当に行って来るわね。1週間よろしく」



 母親と父親は遊びに行った。アメリカに。

 一緒に行くかと誘われたが、まったく行く気がしなかった。夏休みなのに、どうしてアメリカまで行かなきゃいけないのか。

 ・・・・・・自分でも良く分からない言い訳をした。

 今日も暑い。時は4時半頃で窓を全開にしても汗が、顔にたれて来る。

 これが鬱陶うっとうしくてたまらない。

 私はスカートよりズボンの方が好きだが、この暑さが敵ではスカートを履くしかない。
 
 嫌いってことでも無いし・・・凄くラフな部屋着を着ていた。あまりお洒落をしない私にとって、それが私らしいと思った。

 けど人と会うって事になると、恥ずかしいかもしれない。

 私は、何か食べるもの無いかな、と戸棚を覗いた。

 戸棚の中はすーすーしていて結構、気持ちが良かった。このまま、此処に居座り続けようかと思ったが

 あまりにもつらい体勢だったので断念した。


 「惜しかった・・・・・・」


 戸棚の奥底にあったのは、謀お菓子会社、明○製菓の「Fran」であった。

 一応、賞味期限を確認した。大丈夫だ。

 本当は、もっとスッキリした物が食べたかったが空腹もあり、それで間構える事にした。

 食べて・・・また、ある事を考え始めてしまった。

 本当に好きなのか。本人を見れば「すき」と自覚できるけど、見なければ判断できない。


 とても難しいな・・・















 すっかり涼しくなった頃、私は一人ゲームを始めた。ゲームは楽しいけど一人でやると、あんまり楽しくないなぁ。

 つまらないから、すぐに止めた。蚊に刺されることを、承知で外へ出た。

 空はほとんど暗くて少しだけ明るかった。案の定、刺されまくった。かゆいな、なんて思ってたら・・・

 
 「おい。俺のフラン食ったか?」


 あまり会話を交わさない兄が、血相を変えて外に出て来た。

 
 「・・・食べたけど、だ」

 
 














 「今、すぐ買って来い。」

 











 まさか、そんなこと言われるなんて予想もしていなかった。とにかく驚いた。

 
 「なんでさ。置いてあるのが悪いんじゃん。」


 














 「今すぐ」

 










 
 少し怒鳴ったような声で、即答された。しかも、自分の金で、だってさ・・・。ちぇ

 
 一度、家の中に戻るといつの間にか時間は9時半を回っていた。


 「もう・・・こんな時間か」


 気分転換、でいっか。今頃開いてるのはコンビニくらいか。

 私は特に反抗することもなく、コンビニに向かった。小銭を握り締めて・・・部屋着で。

 別に誰に会うって事じゃないし、まいいか。












 「あ・・・」











 会ってしまった。好きな人に。私は「越前さん」と呼ぶ。
 
 そこは薄暗くて少し行けば明かりがあって、コンビニがあるコンクリートの冷たい道。

 まさか会うなんて思ってもいなかった。今日は本人に会うと何故か腹が立ってきた。多分・・・照れ隠し?


 
 「越前さん!こんばんは。どこに御向かいですか?」

 

 少し気取って言ってみた。怪訝な顔をされた。やばかったなかと後悔する私。
 
 

 「・・・あんたは?」



 普通に受け止められてしまった。こっちが恥ずかしくなってくる。しまったな・・・

 

 「コンビニです。」

 「あっそ」


 「「・・・・・・」」






 「「ねぇ」」









 
 「「そっちから」」

 
 「・・・ははっ。そっちからで良いよ。どうぞ」

 見事に発言が重なって、吹き出してしまった。私は越前さんに先をすすめた。


 「じゃあ先に。・・・『越前さん』って止めてもらえない?」

 
 「・・・なんで?」

 
 「なんでって・・・嫌じゃない?」

 
 「どこが?」

 
 「・・・だから遠い感じがしてさ」

 
 「・・・・・・・・・っ」

 
 思わぬ越前さんの発言に、黙るしかなかった。だって本当に嬉しかったから。
 
 女ってすっごい些細ささいなことで嬉しくなるって聞いたけど、まさか自分がそう思うなんて。

 「っじゃあ何て呼べば良いのさ」

 
 「んー・・・。なんだろね」


 私は言って良いのかも判断せず、言うしかない、と思った。
 
 口走った過ちか、正当な言葉。私は、この時一世一代の決断といっても過言ではないくらい、私は私を凄いと思った。


 「じゃあ『リョーマさん』って呼ぶ!!!」

 
 「・・・だから『さん』とかが嫌なの」

 

 「じゃ『リョーマ』・・・?」

 
 「いいんじゃないのっ」

 
 すっごく嬉しかった。男の子とあまり縁が無い私にとって、下の名前で呼ばれること呼ぶこと。あり得ないものだと思ってた。

 
 「じゃっ俺だって『』って呼ぶよ」

 
 「え゛」




 「何?嫌なの?嫌なら別にいいけど・・・」

 「いやいや!嫌なわけじゃないよ!!ただ、」


 「ただ?」


 「ただ・・・びっくりして。嬉しくて。」


 この時リョーマはが何故、これ程まで喜んでいるのか分からなかった。

 私は嬉しくて嬉しくて、どこまでも飛んでいけそうな気分になった。なったは良いが、忘れてる物に気づく。



 「!!越前さん!今何時か分かりますか!?」

 
 「・・・・・・『リョーマ』じゃないの?」

 
 「っあぁああぁっリョおマ!!何時か分かりますか?」


 
 初めて呼んだ。凄く緊張した。自分の顔が熱くなってくるのを感じた。

 リョーマは笑顔をつくった。腕に巻いてある腕時計を見て答える。


 「ありがと。えっと9時35分だけど?」

 
 「(ありがと?)35分!?本当でっすか!?」

 
 「俺が嘘つくと思う?」

 
 「?え、いや。ありがとう!!それじゃっ」


 が急ぐように去って行くと後ろからリョーマが突如、叫んだ。

 
 「あんた・・・の家って時間厳しいの?まだ早いよ。」


 が振り向きながらも走り叫んだ。


 「こっこれで早い!?リョーマん家が遅いんだよ!!あああじゃあ、また今度!!!」

 
 の走り去る顔は、これ以上ないほどの笑みが頬を染めていた。

 これから何かが始まるような気分で、の胸が躍っていた。
 
 
          『ありがとう』

  
 誰に伝えて良いか分からない、この感情。これからも、ずっとこうして居たいな・・・。

 































 「ありがとうございましたー」


 コンビニを出たは、ほっと胸をで下ろした。と同時に驚きのあまり、後ずさってしまった。

 
 「早かったね。」


 そこにはリョーマが居た。やあ、と手を振っている。もちろんを待っていた。

 
 「どうして居るの!?」

 
 「居ちゃダメなの?」

 「そんなこと無いけど・・・家、大丈夫??」

 
 あきれた顔でを見つめる。は不思議でたまらない顔をした。


 「・・・だから、ん家が早いんだってば」

 
 ははは、と笑い返すの顔は、又しても頬が普段より上がっていた。


 「じゃあ私は帰んないと、兄ちゃんが五月蝿うるさいから・・・また今度。ばいばい」





 

 「・・・・『また』っていつ?」


 
 リョーマが真剣な目で、の答えを待っている。


 「?部活とか・・・ふらふら歩いてれば会えるんじゃないっ?」


 思わぬリョーマの言葉に、戸惑いながらもはっきり返事を返す。声は少しだけ震えていた。

 リョーマとの距離は1メートル弱。


 「そう・・・・・ねえ。約束しようよ。『何時に会う』とか。」


 「え・・・!?」

 
 「聞きたいこともあるし、いつか言うよ。だから、」

 
 「うえええっ・・・・ごめん!!!じゃっばいばいっ」


 



 私にはリョーマが凄く、怖く見えた。初めてあんな怖いリョーマ見た気がした。――――――怖かった。
 
 だから逃げ出した。後ろから、って呼ばれるのが聞こえた。私は振り向かず、まっすぐ家へ駆けて行った。

   

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 どうしたんだ!!!!さんっっ 涼しい戸棚より惜しいよ、これわ。
 私だったら『6時に会いましょう♥』とか言っちゃたい・・・!!!!ドリームぅっっ
 あと背景暗くてごめんなさい!!!夜、って感じをイメージしたんですがぁ・・・沈没。
 それではっどういう展開になることやら・・・さん!!これからもよろしくお願いします><
               2003、08、07 いち





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